東大では、どんなアクティブラーニングが行われている?〜”ALESS”のご紹介〜

2018年3月31日

東京大学におけるアクティブ・ラーニングの実施例を紹介します!

昨今広まってきたアクティブ・ラーニングですが、日々の授業には活用されていますか?

アクティブ・ラーニングは、大学教育から使われ始め、今では小中高にも広まってきています。そこで本記事では、東京大学で実施されている探究型アクティブ・ラーニング (PBL: Project Based Learning) の1つである”ALESS”の内容について、

  • “ALESS”とは?
  • ALESSの流れ(具体的な体験談)
  • なぜALESSを実施するのか?

という3つの項目に分けて紹介していきます。 きっと、日々の授業に活用できるポイントを見つけていただけるのではないでしょうか?

「アクティブラーニングってなんだっけ?」という方は、こちらの記事から参考になさってくださいね。

なぜ、いま、アクティブラーニングなのか?

“ALESS”とは?

ALESSとは、”Active Learning of English for Science Students”の略で、東京大学で2008年から実施されている理系学生に向けたアクティブラーニングの授業です。(文系学生に対しても同様に、ALESA(Active Learning of English for Students of the Arts)が2014年から開始されていますが、本記事では主としてALESSに関してご紹介します。)

この授業は、1年生全員が1学期間にわたって履修する必修科目です。担当教員は英語のネイティブスピーカーですが、必ずしも理系の所属ではありません。 この授業の主な目的は、

  1. 学生が主体となって簡単な研究を行い、
  2. それを題材にした論文を英語で書き
  3. 英語で研究内容をプレゼン発表する

ことです。いわば、小学生の夏休みの宿題、「自由研究」を、英語でやろうという試みです。

1.の研究を行う上で、学生は自ら実験を立案・計画、実施する必要があります。学生の補助をする場として、”ALESS Lab”があります。ここは、研究計画の立案・実験の実施・結果の分析と解釈・考察の全ての段階で、学生がサポートを求めに行ける場所で、高校でいう理科室+職員室のような施設です。
2.の英語による論文を書く段階、および3.の発表の段階においては、授業担当者やTAによる指導が入ります。 では、次に、具体的な体験談をご紹介します。

ALESSの流れ(体験談)

ALESSは1学期間(13回)にわたる授業ですが、いきなり実験を始めるわけではありません。初回〜第3週までは、実際に出版された英語の論文を読むなど、科学英語に触れる機会が与えられました。また、このときに英語論文における頻出表現や、IMRaD法(後述)を学びます。 第4週目以降、いよいよアクティブラーニングのフェーズに入ります。

班決め、テーマ決め、計画立案 (第4回)

論文を書く上では、テーマが非常に重要になってきます。 ALESSは、実験テーマは学生自らが発案します。

1人1つのテーマで研究を行うクラスもありますが、私のクラスでは3、4人班で1つのテーマを扱いました。学生が個人で、興味あるテーマをできるだけ考え(ブレーンストーミングし)、近しい分野のテーマを挙げた学生同士で班をつくりました。

班が決まった後に班員で話し合ってテーマを1つに決めます。これがなかなか決まらずに大変でした。まず一口に「テーマ決め」と言っても、テーマが漠然としている/広すぎると、何から手をつけてよいのか分からなくなるため、ここでできるだけテーマを具体的にして絞り込むことが重要です。また、「発案したテーマに関する先行研究について文献を検索することによって、テーマに新規性があるかを確認したり、実験の見通しをつけたりすることができる」というアドバイスを教員からもらったことによって、ばらばらだった意見がまとまっていきました。

私たちの班のテーマは、「駒場キャンパスに生息するダンゴムシの光による活性化について検証する」というテーマを設定しました。まずはダンゴムシに関する先行研究から、実験の計画に必要な情報を抽出しました。

しかし計画とは言っても、まずはやってみないとわからないだろうということで、この時点ではしっかりとは立てていませんでした。

実際に実験をする(第5回~第9回)

私たちは早朝の駒場キャンパスでダンゴムシを集め、ダンゴムシに光を照射することによってダンゴムシの移動方向が変わるか否かを評価しました。実験の方法を決めるのには非常に苦労しました。

まず、ダンゴムシは捕まえることによってショックを受けるのでしょうか、手で捕まえて間を空けずに実験すると、人間の手から逃れようとして一所懸命に逃げていくので、実験になりませんでした。
そこで捕獲方法を変えたり、捕獲してから暗所でしばらく飼ったりするなど様々に条件を検討して、実験を重ねることで、ある程度定まった結果を得ることができました。

光に暴露される時間が長いほど、ダンゴムシはランダムに動き回る様子が観察されました。ダンゴムシは普段落ち葉の陰や岩石の裏に生息しているので、「過剰な光に暴露されると興奮して高速で走り回る」と結果を解釈しました。 実験条件の検討に際しては、班員同士で意見を出し合い、創意工夫を重ねました。

これらの議論をしているとき、自分が「主体的に学ぶ」ことができていると体感できたように思います。

方向の定義(論文に用いた図より)
実験の様子

英語で論文を書く(第7回~第12回)

実験と並行して、IMRaD法に沿って論文を書き始めます。IMRaD法とは、英語論文に見られる世界の標準的形式の一つであり、Introduction/導入、Methods/方法、Results and Discussion/結果・考察という構成です。これに従って、頭から論文を執筆していきます。

1回の授業ごとに1セクションの執筆を完了し、その度ごとに”査読/peer review”を行います。これは、違う班のメンバーが執筆した論文について、アドバイスや意見を述べ合うことによって、お互いの学びを深めることを目的としたものです。
査読は、英語の文法ミスなど初歩的な誤りはもちろんですが、段落全体として矛盾がないか、論理に飛躍がないか、もし飛躍があったとしたらどのように修正できるかを、自分の班のメンバー以外の人とペアになって指摘しあうものです。
各セクションごとに作るペアを変えることによって、指導教官に論文を提出する前複数の学生から意見をもらうことになります。(ここで、他の学生に対して行った査読の「量」や「質」も評価の対象に含まれるので、査読の過程を紙に残して教員に提出しています。)

任意ですが、担当教員や相談員などに、英語表現に対するアドバイスをもらうこともできます。また、同一の班の研究ではあっても、論文執筆は個人が独立して行いました。 下の図は、私の論文の”Result”セクションの一部です。

私の論文の”Result”セクションの一部です

最終的に論文のすべてのセクションを執筆し終えると、次は研究発表の準備に入ります。

英語での発表(第13回)

最後の授業では、それぞれの班(学生)が自ら行った実験について英語で発表します。このプレゼン発表の本番と、執筆論文が主な成績評価の対象となります。

1班あたり20分くらいの短いものでしたが、スライドやポスターなどを用いた自由な形式で、原稿を見ることなく英語で発表しました。大変でしたが、良い経験になりました。学生同士の質疑応答も英語で行われ、積極的な質問が促されました。授業内で、練習(リハーサル)の時間も取られました。

なぜALESSを実施するのか?

ALESSの授業では教科書は使用しない代わりに、学生が主体的な行動、思考が促されます。教員は、それぞれの生徒に即した対応が必要になってきます。

このようなアクティブラーニングの実践および異言語による論文執筆の指導は、教員にとっては多大な労力を要します。それでもALESSが10年にもわたり実施されてきた理由とは、何でしょうか?

まずは、社会のグローバル化に伴い、英語がますます必要となっているという理由が挙げられます。科学者も例外ではなく、大学以降は英語で情報を収集し、発信していく必要があります。また、他の科学者とのやりとりにおいても、主体的に考え研究をリードしていくことが求められているのではないでしょうか。

ALESSという英語を用いたアクティブラーニングは、学生の主体性を養い、英語力も同時につけるという2つも目的を設定し、学生の将来に役立つ力を与えてくれる授業であると、考えられます。

 

まとめ

今回は、ALESSについて紹介させていただきましたが、いかがでしたか?

・ALESSは、「英語で行う自由研究」のようなアクティブラーニングの授業であり、学生のやりたいことや興味をベースにした内容で進めていくことができる。
・ALESSでは英語で「論文」を書かせることによって、学生のライティングの力を鍛えることができる。学生同士で自分たちの英文を添削し合うことによって、高めうことができる。
・ALESSは、「自分の意見を世界へ英語で発信する」ことを考える良い(おそらくは初めての)機会になる。

主にこの3つの項目に分けてご紹介してきました。

班で自由研究を英語の文章で自分の論を展開したり、英語のプレゼンで発表したりする機会は普段なかなかありません。ALESSではそれを無理やり作り出すことによって、大変ではありますが新しい視点からの学びが可能なプログラムとなっているように思います。

ぜひ日々の授業に活用できるポイントを探してみてください!

参考文献

東京大学ホームページ http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/zenki/aless-alesa/index.html
Active English at Komaba http://ale.c.u-tokyo.ac.jp/ale_web/index.php/ja/
アクティブラーニングについて http://www.core-net.net/g-edu/issue/5/


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