アクティブラーニングの落とし穴~その問題点と解決策とは?~

2018年3月31日

最近巷で話題のアクティブ・ラーニング。
読者の皆さんの中でも、その言葉を耳にしたことがある方が多いのではないでしょうか?現役教員の方の中には、「実際にアクティブ・ラーニングを実践したい!」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし、アクティブ・ラーニングは実践の仕方を間違えるとかえって逆効果を生んでしまう場合があります。

そこで、今回の記事では、アクティブ・ラーニングの知られざる落とし穴について見ていきたいと思います。

「アクティブラーニングってなんだっけ?」という方は、こちらの記事から参考になさってくださいね。

なぜ、いま、アクティブラーニングなのか?

アクティブ・ラーニングは万能なのか?

そもそも、アクティブ・ラーニングとはいったいどのようなものなのでしょうか?

文部科学省が平成24年8月28日に発表した中央教育審議会答申『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~』の中では、

教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。

と定義づけされています。

端的にまとめると、「認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力が育成されるような能動的な学修」ということです。

実際、アクティブ・ラーニングの手法を用いた実践については、多くの成功例が挙げられています。

例えば、

  • 生徒が授業に積極的に参加するようになった!
  • 生徒のコミュニケーション能力が高まった!
  • 生徒が学ぶ楽しさを理解するようになった!
  • 生徒の成績が上がった!
  • 生徒の授業に対する評価が上がった!

などです。いいことずくめですね。

「これなら、すべての授業においてアクティブ・ラーニングを実践するべきだ!!!」とお思いになった方も多いのではないでしょうか?

いやいや、ちょっと待ってください。

アクティブ・ラーニングはあくまで、ひとつの手法にすぎません。

その使い方を間違えると、生徒の学びが抑制されてしまったり、先生側の自己満足で終わってしまったりするのです。

次章からは、アクティブ・ラーニングの落とし穴について、教師が気を付けなくてはならないことを具体的に見て行きたいと思います。

アクティブ・ラーニングの落とし穴➀ ~生徒のおしゃべり問題~

生徒が授業に関係ないことを話してしまうのでは?

アクティブ・ラーニング形式の授業というと、多くの方がグループでの活動や探究的な活動を思い描いていると思います。
実際、先ほどの答申の中でも、「発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等」が有効な方法として挙げられていました。

しかし、このように答申の中で具体的な手法を提示してしまったからこそ、アクティブ・ラーニングの形式的な面が強調されてしまっているという側面もあります。

普段一斉授業を行っていた先生が、いきなりグループ活動を始めたら、生徒たちの反応はどうなるでしょうか?

おそらく、授業に関係のない話を始めたり、逆に何を話したらいいのかわからずに黙ってしまったりしてしまうと思います。

では、どのようにすればよいのでしょうか?

めあてを明確にする

アクティブ・ラーニングは、しばしばその手法が注目されがちです。
ですが、アクティブ・ラーニングの手法が万能だというわけでは決してないのです。
ただグループ活動をすれば生徒が積極的になるわけでも、ただ探究活動をすれば生徒の成績が上がるわけでもありません。

大事なのは、生徒と教師がその時間のゴール・めあてを共有することです。

アクティブ・ラーニングを行おうとしてうまくいかない場合、たいていは生徒が指示を理解していないかその活動を行う意味を感じ取れないかのどちらかです。

なぜ今グループ活動を行うのか、この活動を行うことで生徒たちにどうなっていてほしいのかを明確に生徒に示し、それを生徒がきちんと理解する必要があります。
そのためには、当然ながら先生はきちんとした目的意識をもってアクティブ・ラーニングを導入しなくてはなりません。

ただアクティブ・ラーニングの手法を取ればいいのではなく、生徒に対して何らかの達成目標を提示し、その目標を達成するためにアクティブ・ラーニングの手法を選択する。

そのような授業展開であれば、生徒が雑談ばかり行ってしまうような授業は減っていくはずです。

アクティブ・ラーニングの落とし穴➁ ~「教える」と「学ぶ」の違い~

前章では、授業のめあてを明示することで生徒が授業に関係のないおしゃべりをしてしまうことは防がれる、というお話をしました。
合わせて、アクティブ・ラーニングは万能な手段ではなく、授業の目的に応じて選択すべきものであるということにも触れました。

では、そもそもアクティブ・ラーニングの目指すものとはいったい何なのでしょうか?

「先生が教える」授業をつくるか「生徒が学ぶ」授業をつくるか

アクティブ・ラーニングの手法を授業に取り入れる際に、やってしまいがちなのが「従来の授業スタイルにグループ活動を取り入れる」というものです。

しかし、これもまたアクティブ・ラーニングの目的が達成されているとは言えません。

なぜなら、従来の一斉授業とアクティブ・ラーニングを用いた授業とでは、授業の目的がそもそも違うからです。

前者の目的は「教師が生徒に知識を与えること」、後者の目的は「生徒が自ら学ぶ姿勢を身に付けること」にあります。

現代社会においては、後者の「自ら学び取る力」がより求められるようになっています。
知識偏重型の授業からの転換を図るためには、授業のあり方から再考する必要があるのです。

目的に応じた適切な授業のあり方を!

アクティブ・ラーニング型の授業は、その手段に意味があるのではなく、その目的に意味があります。
「教師が教える」から「生徒が学ぶ」への転換は、授業の目的を生徒目線に完全に移行させることを意味します。
そのため、生徒の学びに必要な場合には、グループ活動などの手段を取らない一斉授業の方式も時には必要になるのです。

いくら社会で求められているからといって、すべての授業でアクティブ・ラーニングを行う必要はありません。

盲目的にその教育改革の流れに乗るのではなく、授業の目的を踏まえた上で、「教師が教える」と「生徒が学ぶ」のバランスを考えればよいのです。

アクティブ・ラーニングの落とし穴➂ ~個の学びと集団の学びのバランス~

生徒の学びにも種類がある?

先ほど、「教える」と「学ぶ」の違いについて考えましたね。
その違いを踏まえた上で、「生徒が主体的に学ぶ」ような授業づくりを行うことにしたとします。

しかし、生徒の学びにも「個の学び」と「集団の学び」という2種類の学びがあるのです。

例えば、授業全体を通して一つの大きな問いかけをしたとします。
その結果、授業の最後にはクラス全体の議論をまとめそのクラスなりの答えに辿り着きました。
多くの生徒が議論に参加し、その授業は大成功に終わったように見えるかもしれません。

しかし、Aさんは、自分なりにその問いについての考えは深められたけれど、議論にはあまりついていけず発言もかなり控え目でした。

一方Bさんは、みんなの議論の内容を追ってその理解はしたけれど、自分の考えをあまり持てずに終わってしまいました。

この時、2人の学びのあり方に大きな違いがあるのがお判りでしょうか?

Aさんは、個の学びを深められましたが集団の学びを十分に深められていません。
Bさんは、集団の議論により得られた学びはありましたが個の学びは深められていません。

クラス全体で何らかの学びを得られたとしても、個々人の学びのあり方は大きく異なるのです。

「個の学び」と「集団の学び」、どちらが大切か?

勿論、アクティブ・ラーニングを行う以上は「個の学び」と「集団の学び」のどちらも最大限になるよう追求しなくてはなりません。

しかし、実際には、先ほどの例のようにクラス全体で納得解を得られたら、それで満足してしまうのではないでしょうか?

アクティブ・ラーニング形式の授業であろうがなかろうが、最も重要なことは「生徒自身が学びを得ること」です。
当たり前ですが、他人の答えを写すだけでは個の学びにはつながりません
個の学びがあってこその集団の学びである、ということを今一度意識して授業設計を行う必要があるのです。

まとめ

いかがでしたか?
一見万能に見えるアクティブ・ラーニングにも、意外なところに落とし穴があるのです。

アクティブ・ラーニングを導入する際には、

・授業のめあてを明示する
・生徒の学びを最優先させる
・個の学びがあってこその集団の学び

ということを意識してみましょう!

アクティブ・ラーニング型授業の実施が叫ばれる近年の流れは、新たな手段の導入ではなく、授業の目的の再考を促すものだと言えるでしょう。
先生方の意識改革が求められていると言っても過言ではないですね。

参考文献

西川純『すぐわかる!できる!アクティブ・ラーニング』
中原淳・日本教育研究イノベーションセンター『アクティブ・ラーナーを育てる高校』
文部科学省HP www.mext.go.jp/

 


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