毎年、2年生が大学体感プログラムに参加してくださっている大分県立別府鶴見丘高校。今年は例年とは違ったコンテンツで行いました。
「総合的な学習の時間」 担当 山本悟史先生に、企画の背景や生徒様の反応について詳しく伺いました。
国公立大学を目指して学習に打ち込むだけでなく、これからの時代に必要な力を身につけるためのキャリア教育にも熱心に取り組んでいる。
総合的な学習の時間を使って、主体的に課題を見つけ自らの意見を発信する力を
- Q別府鶴見丘高校は「総合的な学習の時間」に力を入れていると聞きました。企画にあたって、何を大事にされていますか?
- A全体のプログラムの流れとタイミングです。「総合的な学習の時間」は3年間を通して行います。その中で、いつ、どの時期に、何をやれば効果的か、それは生徒たちに何をもたらすのか、ということを考えながら3年間の指導計画を立案しています。
また、生徒たちに「実施する意義」をどう意識づけ、自覚させるか、ということも大事にしています。2年次については、1学期に「学部学科研究と小論文学習」、2学期に「東京探究プロジェクト」、3学期に「集団面接」を行います。
他には、大学のオープンキャンパスへの参加、「卒業生(大学生)に学ぶ」なども行いました。 - Q本プログラムは、「東京探究プロジェクト」の一環でしたね。ここでの目的について教えてください。
- Aこれからの時代は、主体的に課題を見つけ、探究し、自分から意見を積極的に発信していく力が求められています。「東京探究プロジェクト」では、目的をもって課題に取り組み、そこから新たな気づきを得ると共に、さらにそれを発信していく力を身につけることを目的としています。
今回は「東京の課題について考える」 「別府の利点を東京に活かす」 「東京の利点を別府に活かす」という3つの課題の中から1つを選び、生徒自身がテーマを決め、情報収集、解決策提案を行い、それをトモノカイの大学生の前でプレゼンをする、そして大学生から助言をもらう、というものでした。1年次にも探究活動を実施しており、その延長線上で一歩進んだ内容を行いたい、と思い企画しました。
※ 1年次には別府の課題をグループで4ヶ月考え、各分野の専門職の方々、そして市長に提言をしました。
大学生にプレゼンを聞いてもらうだけでも教育効果がある
- Qなぜ、「大学生に対して」プレゼンだったのでしょうか。
- A本校の生徒はほとんどが大学への進学を希望しています。ですから、大学生にプレゼンを聞いてもらうだけでも教育効果があります。
さらに、大学生から「プレゼンの仕方」や「探究の仕方」などについてアドバイスがもらえると生徒は嬉しいはずです。ただし、最近の生徒は厳しい指摘をされると自信を失ってしまうところがあるので、ぜひ、プレゼンを温かい気持ちで受け止めつつ、それをより良いものにしてくれるようなアドバイスを、大学生ならではの具体的なエピソードを含めて話してほしい、と思っていました。 - Q他に大学生に対しての要望はありましたか?
- A生徒のプレゼンにあたっては、志望学部系統ごとに班を組んだため、各班の担当大学生が、できるだけその系統に近い学部に所属する方になるように依頼しました。トモノカイの東京大学、早稲田大学の学生さんであれば、専門分野でなくとも的確なご指摘や助言はできるとは思いましたが、大学生とのマッチングが良いほうが、プログラム全体としてうまくいくのではないかと考えました。
※ 語学・文学・歴史系、理・工学・情報系を始めとして、6系統に分かれました。
大学生からのプレゼンが実力の伴ったものだからこそ、生徒も素直に助言を受け入れ、モデル化できた
- Q山本先生は当日、プログラムの現場で生徒さんを見守っていましたね。実際の様子はどうでしたか?
- Aそれぞれのプレゼン内容は決して深いとは言えませんが、なかなか面白いアイディアを提言する班もあり、限られた準備時間の中でよく形にしてきたな、という感じがしました。
放課後も教室に残って発表準備に取り組んでいた班も多く、そうした生徒の主体性が当日の発表にも活かされているように感じられました。
- Qプログラム後の生徒さんの反応はどうでしたか?
- A正直、初めての試みであり不安もありましたが、生徒の反応は大変良かったと感じています。提出された感想文からも満足度の高さが感じられました。
東大、早大の学生の前で発表するということで、生徒は相当に緊張し、厳しい指摘を受けるのだろうと覚悟していたようです。それが意外にも褒められ、その上で的確な助言をもらったことが嬉しかったようです。また、その後の大学生の実力の伴ったプレゼンに触れたことで、素直に助言を受け入れ、モデル化できたように思われます。努力が認められたという達成感と、成長するためのヒントを得られたという有益感が感想文の記述からもうかがえました。
最近の高校生は上手く褒めてやらないといけませんし、褒めるだけでは駄目ですし、なかなか難しいところがありますが、その点、トモノカイの学生さんは生徒のやる気を上手く引き出してくれていました。また、本プログラムにも臨機応変に対応してくれ、大変感謝しています。ありがとうございました。
生徒様 感想文紹介
本プログラムには計275人の生徒様にご参加いただきました。
後日集計した感想文によると、大学生の助言やプレゼン指導がとても参考になった生徒様が94.5%、大学生の模範プレゼンがとても参考になった生徒様が91.9%となりました。
ここでは、一部の感想文をご紹介します。

私たちが考えたものでも、東大生の意見でさらに違ったいいものになったので、すごいなと思いました。私たちの班の玲央さんは、ハキハキしていて、ポイントを1つ1つ教えて下さり、東大生にはなれないけど玲央さんのような大学生になりたいなと思いました。☆自分で行動しろ☆という玲央さんからのメッセージは、私にとってはげましの言葉になりました。やりたいことを自分で行動して行っていきたいです。
この話で、私は世界を広げられたらいいなと考えています。もっと色々なことを知って、この機会を生かしていけたらいいです。今回の体験は本当にいいものとなりました。(理系 女子生徒)

大学生が話しやすい人で、東大のイメージが変わった。アドバイスも分かりやすくて、今後のプレゼンに役に立つものだと思った。フリートークでは、大学の様子や大学生の実態なども知ることができたので、少し東大に行くのも考えてみたいと思った。(理系 男子生徒)

東大生の前の発表ということで、いつも以上にものすごく緊張しました。でも、東大生のお姉さんは思ったよりも優しくて、うなずきながらしっかりと話を聞いてくれました。話し方とか、質問の仕方がとても落ちついていて、的確なところをちゃんとついてくれるなぁと思ったし、さすがだなと思いました。
また、生の東大生の話を聞けるのは、すごく貴重な体験でした。生の東大生の話というのは言葉の重みがちがったし、やっぱりすごいと思った。受験期の話とか、苦手教科を克服するための話とかは、今まで聞いてきた話の中で、一番タメになったと思います。特に、最後のお姉さんも、高校時代の話とかを聞かせてくれて、東大生は、皆が皆“東京大学に行ける”っていう前提で受けているのではなく、自分の行きたいところに、努力して行ったんだなと思って、本当にすごいと思いました。(理系 女子生徒)

プレゼンはとっても上手くいったと思う。早大生も褒めてくれて嬉しかった。「プレゼンの仕方が上手い」と言われたのが何よりも嬉しかった。スケッチブックは、自信はあったけど、他の班のスケッチブックの絵のレベルの高さに驚いて、発表する前は緊張してしまった。問題提示→長所、短所それぞれの提示→問題→解決策→まとめ→今後の課題の進め方は、自分たちもできていたのでその点では安心だった。
早大生の助言として「プレゼンは対話であり、きちんと相手を見て訴えるようにすることが重要」と言われて、カンペばかり見ていたのは反省した。早大生の「会長さん(※担当大学生のあだ名)」はとっても話が上手だった。ああなれたら良いなと思う。(文系 男子生徒)
実際のプログラムの様子
本プログラムの概要は以下の通りです。
通常の大学体感プログラムとはコンテンツが異なり、体験ゼミの部分がプレゼン企画(下表網掛け部分)となっています。
生徒様は約4人1組となって、「東京の課題」 「別府の利点を東京に活かす」 「東京の利点を別府に活かす」から課題を選び、その課題の解決策についてスケッチブックを用いてプレゼンを行いました。
少し緊張感が漂う中、先生による概要説明からプログラムが始まりました。まずは、生徒様と大学生が互いに名前シールなどを使って自己紹介しあいます。パワーポイントですでに自分についてプレゼンをしている大学生もいます。


いよいよ生徒様によるプレゼンの時間です。「待機児童問題を解決するには?」 「外国人観光客には分かりづらい地下鉄の路線図を分かりやすくするには?」それぞれの班が自分たちの持つ問題意識のもと、オリジナルの解決策を考えてきていました。発表も、数値をうまく使ったり、最近の流行ネタを取り入れたりするなど、様々な工夫が凝らされていました。


生徒様のプレゼンに対して、大学生が質問したり、良い点改善点についてアドバイスをしたりしました。「現場の人の声を根拠として取り入れていてリアリティがある」 「序論、本論、結論という流れが分かりやすい」「もっと相手の目を見て自信をもって話すとさらに良くなる」 「情報は詰め込みすぎると分かりづらくなることに注意」など、さまざまなアドバイスを、生徒様は真剣な目つきで聞いていました。


続いて、大学生によるプレゼンです。クイズ形式で行う、実際の製品を生徒様に見せながら行うなど、様々なプレゼンがありました。


先生によるまとめの後、3人の大学生が前に出てプレゼンのコツなどの話をしました。「相手の興味を喚起するような穴をあえてつくる」 「プレゼンには型がある」 「大学に入るとプレゼンをする機会は一気に増える」など、プレゼンの経験を積んできた大学生ならではの内容でした。


フリートークでは、「なぜ東大や早大を目指そうと思ったのか」 「勉強のやる気がでないときはどうしていたか」など、生徒様から多くの質問が出ました。
大学生は自分自身が実際に行った勉強法や、当時のエピソードを交えて語っています。


最後は、代表の生徒さんからの謝辞でプログラムが締めくくられました。
