迷い方指南~文系大学生の学部選択~

2018年3月31日

将来や大学生活の楽しさに直結する重要な選択、それが学部選択です。

そんな学部選択に一度は失敗し、すんでのところで軌道修正に成功(?)した筆者の経験から、学部選択において見過ごされがちな観点や情報源についてご紹介します!

二度の学部選択経験

はじめに、この記事の筆者は、学部選びに一度失敗しかけています。と言うのも、高校三年生のときには「経済学部で経営を学ぼう!」と考えて受験を乗り越え、無事大学生になった三ヶ月後には自分がいかに経済学に興味を抱けないかを痛感しているからです。

そこからは必死に自分の学びたいことを模索する日々でした。幸い筆者の通う東京大学には学部選択の猶予期間ともいえる制度があり、学部二年生の夏に自分の進む学部を決められる制度があったので、なんとか一年ほどかけて、二回目の学部選択を慎重に行い、今では文学や思想について学んでおります(学部選択のやり直しがきかない大学に言っていたらと考えると今でもひやっとします)。

こうした大学一年生から二年生にかけての自分の学部選択の経緯から、「高校生の頃でもこれはできたな」「高校生の頃にこういうことをアドバイスしてもらえていたらな」という部分を抽出してまとめてみたいと思います。学部選択といっても、調べ方がわからないという方や、「もう自分は学部を決めたのだ」と思えた時に役立つかもしれません。

学部選択のポイント〜誰でも調べられる情報編〜

学部選びの基礎中の基礎は何か、と問われたら筆者は迷わず「志望学部のホームページを見ること」と答えます。

多くの大学の各学部のホームページには、その学問の特徴や、実際にどんなカリキュラムが組まれているか、卒業論文の題目など、その学部についての情報がたくさんつまっています。なかには所属教授のエッセイやどんな授業が開講されているかがわかるものもあり、データだけでは分かりにくい、学問や学部の雰囲気や具体的な様子を垣間見ることができます。
また、いくつかの大学の同じ系統の学部を見比べることは、志望校選択にも役立つでしょうし、やりたいことがこの大学では文学部、あの大学では理学部、なんてこともあるので、興味のある分野については先入観を持たず広く、多くの情報源に触れることが大切です

例えば、私の場合は、文学に関心があったのですが、ひとくくりに文学と言っても、各国文学ごとに研究する手法もあれば、映画や小説といったジャンルごとの違いに着目したり、文学が社会に与える影響について考えたりと様々あります。映画も扱える学部や学科は限られてきますし、文学と社会についてなら、社会学部の方が適している場合もあります。

このように、学部名だけではわからない特徴があったり、調べていく中で自分の興味が洗練されていったりということがあるので、ぜひ自分の興味を自分で決めつけず、広く見渡してみることが大切です。

また、ある程度学部が決まってきたら、その先の学科選択なども見据えて、初学者向けの専門書に触れてみるのも良いでしょう。学部によっては初学者向けの推奨ブックリストを公開しているところもありますし、たとえ読みきれなくても、新書から一歩進んだ専門書に触れることは大学生活をイメージするのに役立つことでしょう。

学部選択のポイント〜高校生の頃に知りたかった観点編〜

興味の持ち方

では次に、上で述べたような情報をどう分析し、考えていくかという観点について述べたいと思います。

まず重要なのは、「興味の持ち方」です。

興味の持ち方にも様々な種類がありますが、ここでは大きく二種類の持ち方をご紹介します。それは、

  1. 対象に興味を持つことと
  2. 手法に興味を持つこと

です。
料理で例えてみましょう。とにかくチキンが大好きで、古今東西ありとあらゆる鶏肉の調理法を知りたい人もいれば、素材にはこだわらずにひたすら日本料理を極めたいという人もいるでしょう。
「何を」研究するか、「どのように」研究するかというこの違いを踏まえて学部について考えていくことが大事です。

本が好きだから、文学部。でも本当は本の流通に興味があって、経済学部の方が楽しそうに見えてきた。
論理的に考えるのが好きだから、法学部。だけど、もっと突き詰めて考えたくなって哲学に興味が湧いてきた。

このように自分の興味を読み間違え、安易に「それっぽい」ところを選ぶと、「なんか違う…」ということになりかねません。
自分はどんな興味を持っているのかは、すぐ答えに飛びつかず、よくよく考えてみることが大切です。

また、ここまで検討していくと、同じような学部でも大学ごとに大きな違いがあることが見えてくるでしょう。偏差値だけではなく、本当に自分が行きたいかどうかで考える学部選択はここから始まります。

「学部選択をしない」という選択

次に、学部選択における裏技の話をしましょう。

それは「学部選択をしない」という選択肢です。

記事の序盤でもお話ししましたが、何を隠そう私自身この選択をした学生の一人です。どういうことかというと、大学によっては、入学時には学部をはっきりと決めずに、数年間学んでみてから自分の学部を決めることができるところがあります。
代表的なのは東京大学の進学選択制度や北海道大学の総合入試、国際基督教大学などです。「リベラルアーツ」への注目も相まって近年ではこうした学部選びにおいて柔軟性がある大学も存在しています。
また、教養学部やリベラルアーツ学部などという名称のもとで、そもそも幅広い分野を学ぶことを特色とした学部なども設置されています。

こうした制度、機関を利用することで「学部選択をしない」という選択をすることもできるのです(もちろんその後、自分なりの専攻・専門を考えていかなければならないことは変わりませんが)。

学部選びはやり直せる

最後に、少し学部選びが気軽になるようなお話しをします。

それは「案外入ってからでもなんとかなる」という話です。

大学によっては、在学中の転学部や転学科が認められているところもありますし、大学院まで視野を広げると学部時代と大学院に入ってからで全然違うことを専攻している人もたくさんいます。
さらに言えば、学部時代に学べることには限りもあるので、4年間(ないし6年間)くらいはこの分野について取り組んでみよう、という姿勢でも良いのではないかと思います(人生何が役に立ち、何が面白くなるかはわかりませんから)。
また、どうしても嫌なら一旦退学して別の学部に入り直すこともできますし、そもそも大学を卒業しない人生だって今の時代であれば全くおかしいことではありません。

大事なことは、正しい選択をすることよりも、先送りせずに、その時の精一杯でもって自分の興味・関心、ひいては今後の行くすえについて真剣に考えることであり、それは進学後の人生においても卒業論文のテーマを考えるときや、就職活動での志望会社を考えるときなど、否応なく迫られる選択の一つに過ぎないということなのです。

大学に入ってからも進路選択はできる?~大学生の転部体験談~

 

おわりに

いかがだったでしょうか。あくまで一個人の体験をもとにした文章ですので、至らぬ点もあるかと思いますが、参考となる情報源とその使い方についてまとめてみました。

この記事で紹介した学部選択のポイントは以下の3つです。

  • 各大学、学部のホームページや専門書を見てみる。
  • 自分の興味のもち方について分析してみる。
  • 学部選択以外にも自分の興味を追う方法はあるということを頭の片隅に。

結局現実に存在するのは抽象的な概念としての「◯◯学部」ではなく、キャンパスもあれば先生も決まっている実際の各大学の様々な学部なのです。
ですから、そうした個別の学部について調べつつ、広い視野で自分の興味関心を探り、認識を更新していくことが学部選びに求められることなのでしょう。

また、この文章にしても抜けや漏れ、偏りは生じているでしょう。それを読んで満足してしまうのではなく、批判的に捉え、考え続けることを楽しむことが学部選びの醍醐味です。

「完璧な学部選びができた」という認識が、もっとも学部選びにおいては正解から遠いのかもしれません。

 


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